コロナ禍で際立つ個の時代。飲食店のデザインはどうする?実例で見るパッケージデザイン編

首都圏に発令されていた新型コロナウイルスの緊急事態宣言が22日に全面解除されました。

しかし、感染再拡大の兆候が各地で見られていることから飲食店時短営業継続中です。対面での接客消極的になることで店舗と顧客のコミュニケーションは希薄になる一方です。

今回はコロナ禍においてメニューデザイン研究所が取り組んだパッケージデザインの実例を元に、俄然高まるデザインの重要性を伺いました。

 

店舗と顧客のコミュニケーションデザインの定義

実例をご紹介する前に、デザインの種類について整理してみました。コロナ禍においてスタッフの代わりとなるデザインの機能性は大きく3つに分けることができます。

1.インフォメーションデザイン

HPやSNS等のユーザー体験型デザインメニューブックなどのグラフィックデザイン等、店舗のインフォメーションを担うデザイン。

2.パッケージデザイン

飲食店の新たな販路として取り組む店舗も多い、テイクアウト&デリバリー向けの包装で使用されるパッケージデザイン

3.店舗デザイン

飛沫感染対策や給換気(陽圧、陰圧)対応、対面レイアウトの見直しなどによって設計されたニューノーマルな店舗デザイン


メニューデザイン研究所ではこれまでメニューブックを通じた店舗と顧客の接点を創造してきました。飲食店の個がより重要視される時代においてインフォメーションデザインは店舗にとっての価値そのものに昇華すべきと考えています長年培ったウハウをパッケージデザインに落とし込んだ此度実例をご紹介します。



インタビューを行ったベアーズコーポレーションとは?


主力業態の「てしごとや ふくの鳥」を始め、地方創生をテーマとした業態複数運営。大量生産に向かない特殊な技法を持ち得て作る48時間熟成唐揚げ「惣菜・べんとうグランプリ2021」で金賞受賞。第12回からあげグランプリ®では決勝進出中と話題の商品を開発同唐揚げを独自のライセンスモデルで販売するとコロナ禍で新たな販路を模索する飲食店から注目を集めている48時間熟成唐揚げ企画担当されている岸氏に販売の経緯とデザインに対する想いを伺いました。

株式会社ベアーズコーポレーション

 

●インタビュイー ベアーズコーポレーション 岸

●インタビュアー MEDIYライター山﨑


Q1.48時間熟成唐揚げの販売をされたのはいつからですか?

販売こそ去年ですが、販売戦略はコロナになる以前から練っていました。居酒屋事業の先行きが業界全体を見回しても明るくないと感じていたため新たなビジネスモデルの確立必要としていました。運営している「てしごとや ふくの」は今年で25周年を迎えますが、創業から鳥肉をメインにした料理を販売していましたので新たなモデルを作りあげる上でも唐揚げ自分たちのストーリー性に沿って取組めると考えていました。



Q2.販路はどちらになりますか?

メインで販売しているのはテイクアウト、デリバリー、イートインです。当初は「ふくの48時間熟成唐揚げ」として「ふくの業態だけに限って販売していました。しかし、商品名に「ふくのが入ることで販路を狭めてしまう恐れがあったため、屋号を商品名から取ることに決ました。業態問わず使い勝手の幅が広がったことを機に他店舗で販売を推し進めていくことにしました



Q3.FCとは違うライセンス契約とは何ですか

そもそもは加盟店を募りフランチャイズパッケージを提供するFCモデルを想定していました。しかしコロナによって飲食業界の様相が大きく変わりだしていく中で、従来のFCモデルの発想が古臭く感じるようになりました。今すぐにでも新たな販路を手にしたい方達にとって、ライセンス契約という形で商品を卸す方が手間もなくいつでも買え、いつでもやめられるという両社にとってのメリットが大きいと感じました。


 
Q4.ライセンス契約料はありますか?

ライセンス料は0円です。冷凍保存した唐揚げを卸すだけ至ってシンプルな契約です。取引先の審査今時点では設けてなく、料理への愛情を持たれているお店であれば卸しています。現在関東で6店舗様に卸していますが業態問わず引き受けています。

  

卸し先であるハダノロマン食堂様のツイートから引用



Q5. 上記の販売方法で考慮されたこと等はありましたか?(ポーションや提供方法等で)また販売する上での難しさがあれば教えてください。

当初はおいしい唐揚げをつくれば自ずと売れるだろう、リピートしてくれるだろうと楽観視していました。ですが販売するまでにかなりの時間を要したこともあり、販売が決まった時には既に唐揚げをウリにしている店舗が無数にできあがっていました。飽和化した中では代り映え元々しない唐揚げは見向きもされず、食べてもらえるステージにすらあがることができずにいました

例えおいしそうに唐揚げを撮影した所で見た目での差別化には限界があります。仮に食べてもらえたとしても劇的な変化を望むことは不可能でしょう。これらを踏まえると我が社が今までこだわってこなかったもので差別化を図らなければならないという考えに至りました。今回はそれがパッケージデザインだったのです



Q6.読みながら食べてもらうことで記憶に残るデザインとは?

48時間熟成唐揚げのウリは「冷めてもおいしい唐揚げ」です。どうすればおいしい状態が保てて、冷めてもパリッとジューシーな味になるのか?気の遠くなる回数の試作と試食を繰り返しました。そんな開発から完成に至るまでの経緯を伝えたい、読んでもらいたい、という想いが私達には強くありました。そのためパッケージ自体を「読み物」にすることで、食べながらでもこだわりを伝えることができないかと考えました。


パッケージデザイン

 

卸し先であるハダノロマン食堂様のツイートから引用(パッケージデザインをポスターに流用)

 

Q7.パッケージデザインで気に入ってる点はありますか?

まず全体的なトーンから直向きに唐揚げを作っている感じが伝わってきます。具体的には、

・リアルな鳥のイラスト
・文字のフォント
・全体的な色味。色合い。

等が挙げられます。

雰囲気が伝わりやすいデザインは同時に、店舗自体の温かみまで表現してくれているのがとても気に入っています。


 
Q8.お客様(消費者)から商品に対する反響いかがですか?

テイクアウトをリピート購入されているお客様からは「温めなくてもおいしかった」と我々が狙いとしていた反響を頂けています。また味自体が他の唐揚げと比べて断然おいしいとも言って頂けています。パッケージデザインを通じて商品の個性伝わっている証拠だと手応えを感じているところです。



Q9.デザイン作成する過程でメニューデザイン研究所の感想がありましたらお願いします。

営業マンとの事前共有が深い所まで成されていたので特別に時間をかけて刷り合わせることなく物事が進みました。フローに置き換えてみるとこうでしょうか。

  1. 普段から営業マンが寄り添ってくれている
  2. 考えていることを汲み取ってくれる
  3. デザインとしてアウトプットしてくれる

このようなワークフローは当たり前のことかもしれませんが、これができている会社は他に知りません。それだけ容易なことではないということです。ではなぜこれがメニューデザイン研究所でできているのかというと、担当営業マンとの信頼関係に他なりません。みなまで言わなくても想いを汲んでくれることがメニューデザイン研究所ならではの強みであるし、アウトプットの形はメニューに留まらずパッケージデザインでも的確に表現してもらえました店舗と商品の個の強みをグリップしてもらえるからこそ自分達のカラーを色濃く再現してもらえるのだと思います



インタビューを終えて(まとめ)

インタビューは担当の営業マンを交えながら行いました。以降談話ですが商品化にあたり包材にかけられるコスト限界があるとのことでした。そのコストを下げるには一定のロットが必要となり、それを管理していく倉庫も必要になります。テイクアウトは比較的導入しやすいサービスと言われています利益を生み出していくには相応の準備が必要となります。メニューデザイン研究所ではお店の個性を尊重し活かすことは勿論ですが、運用も配慮したデザイン提案を行います。今後、益々高まるとされる飲食店の個に寄り添ったデザインで店舗と顧客を繋ぎます。

 

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